嘘恋のち真実愛
翌朝、ドアのノック音で目が覚めた。目を開けて、見慣れない天井と壁に、ここはどこかとキョロキョロと首を動かす。


「ゆりか? 起きてる? 開けてもいい?」

「あ、はい!」


ドアの向こうから聞こえてきた部長の声で、ハッと現在の状況を思い出した。ここは、部長の寝室だ。

昨夜、順番に入浴を終えたあと、部長が「ベッドを使って」と言った。彼はソファーで寝るというから、私がソファーで寝ると強く申し出た。

しかし、押し問答した結果、私が部長のベッドを借りることになった。急に決めた同居だったから、寝るところまで考えていなくて、自分の不手際だからと部長は私を寝室に押し込んだ。


「ゆりか、おはよう」

「おはようございます……」


上半身だけ起こして挨拶を返すけれど、パジャマ姿で朝の挨拶を交わすのは、なんだか気恥ずかしくて、照れてしまう。

それにしても……今週だけとはいっても、毎日彼をソファーで寝かせるのは忍びない。

なにか良い案はないかな。


「あの、部長」

「ここでは部長と呼ばないと約束したよね?」
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