嘘恋のち真実愛
私と鈴川くんは、それぞれ感想を述べた。征巳さんのお勧めだというだけあって、本当に美味しい。


「良かった、ふたりの口に合ったようで。芦田さん、今日は顔色がいいね」

「そうですか? 実はちょっとやる気が出ているので」

「へー、やる気か。いいね、期待してるよ」

「はい」


征巳さんのおかげでやる気が出ているとは言えないけれど、期待していると言われてうれしくなった。仕事も婚約者役もがんばろう。

行きは一緒の車でも、帰りは別々。電車に揺られながら、夕食のメニューを考える。

征巳さんは何時に帰るのだろう。得意先での打ち合わせが長引いていると、連絡はもらっている。

一緒に買い物出来そうにないから、ひとりでいつも利用しているスーパーに入った。朝は和食で、昼は洋食だったから、夜は中華にしようかな。

料理がほぼ完成した頃、征巳さんが帰ってきた。


「おかえりなさい」

「ただいま。美味しそうな匂いがするね」

「これからテーブルに並べるので、着替えて待っていてください」

「うん、ありがとう」
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