偽りの愛で、永遠の愛を誓います
同棲生活
「琴葉、起きろ」

「…ん?」

「おはよう」

ゆっくり目を開けると、目の前には整った蒼弥さんの顔。

一瞬何が何だか分からず、ぼーっとした後悲鳴をあげた。

「きゃぁぁぁぁぁぁぁぁ!」

「なんだ、人を化け物みたいに」

「あ、あの、なんで蒼弥さんが隣に…」

「ここは俺の家だ。いて当たり前だろう」

そう言われて、私は我に返った。

そうだ、昨日から蒼弥さんの家でお世話になることになったんだ。

「朝ごはん作って来ますね」

「味噌汁とご飯は絶対欲しい」

「洋食派じゃないんですか?」

「俺は生粋の日本人だぞ。和食を好むに決まっている」

真顔でよく分からないことを言われたので、私は苦笑いをしてキッチンに向かった。

おかずは何にしようかと冷蔵庫を開けると、冷蔵庫の中はペットボトルの水が1本入っているだけだった。

「仕方ないから、今日はコンビニでおにぎりでも買ってもらおう」

「今日の朝飯はなんだ?」

「それなんですけど、材料が何もないのでコンビニでおにぎりでも買ってください」

「あぁ、そういえば買い物に行くのを忘れていたな」

呑気なことを言いながら、蒼弥さんはテレビを付けた。

結婚をすることを認めた訳ではないが、同棲生活は悪いものではないのかもしれない。

私は、心のどこかでそんなことを思っていた。

「さて、俺は出社するけど琴葉は家のこと頼むな」

「はい、気をつけて行ってらっしゃい」

「新婚みたいだな」

「何言ってるんですか!遅刻しますよ!」

急にそんなことを言い出した蒼弥さんを送り出し、私は家事を始めた。

元々、母の手伝いが大好きだった私は家事が得意だったりする。

だから、この仕事は嫌じゃない。

まぁ、結婚してくれだなんていきなり言ってくるのは嫌だけどね。

とりあえず一通りの家事を終わらせ、今度は買い物に出かける。

あんなに空っぽな冷蔵庫は初めて見た。

近所のスーパーに向かい、必要な物を購入しマンションに戻った。

何もすることがなくなった私は、スマホを手に取りニュースを見たりメールの返信などをする。

すると、見慣れないアドレスからメールが来ていた。

「人事異動について…お知らせ…?」

メールの件名を読み、内容を読むと驚くべきことが綴られていた。

「なんで…ただの家政婦のためにここまでするのよ…」

そのメールは、私が所属していた部署に宛てられたものだった。

突然決まった私の人事異動の説明、そして今まで私に対して誹謗中傷を浴びせた人への処分。

大きくわけてこの2つが書いてあった。

「蒼弥さん…ありがとうございます…」

私は、彼に心からのお礼を呟いた。
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