凌玖先輩から逃れられない
西陽に差された廊下で、繋がれたふたつの影を見ては照れ臭くなる。
「誰もいないからいいだろう?」
「……っ」
ドキドキと心臓が高鳴って何も言えない代わりに、力いっぱい握り返した。
そうしていると先日もやってきた生徒会室に着いて、先輩がドアノブを回す。
明かりが灯しており、中がワイワイガヤガヤしている。
「おー、おかえりー、っ!?」
出迎えてくれたのはマッシュヘアで落ち着いた雰囲気のある男性。
わたし達を見るなり、声にならない驚嘆をあげている。
「……初めまして。副会長です。
君があの噂の沙耶ちゃんかな」
「気安く沙耶ちゃんと呼ぶな」
「独占欲強い男は嫌われるよ?沙耶ちゃん、立ってるのもアレだからこっちにおいで」
先輩はムッと押し黙って副会長を見ているが、彼の睨みを楽しそうに受け止める副会長。
……あれ、いつのまに。
知らないうちに離れてしまった手を見つめながらも、副会長の厚意の甘えたのだった。