凌玖先輩から逃れられない
たじろぎながらも答えると、先輩は「そうか」と短く返し目を閉じた。
わたし、間違ったこと言っちゃったかな……?
先輩に不快な思いをさせたらどうしよう。
先輩の様子を見て不安になってしまう。
「俺が王子様、か」
「せん、ぱい……?」
すると──
わたしの手を取り、指先にそっと口づける。
「……え、と」
「俺は……」
突然のことに目を見張り、思わず顔を見上げて先輩の顔を見つめる。
わたしの視線に気づいたのか、閉ざされた目を開いて、呆れとも慈愛とも捉えられる極上の微笑みをした先輩は何かを言いかける。
「お前に恋焦がれている、ただの男だ」
その視線は王子様じゃなくて“男の人”のもので、とても熱くて。
目線を外したいのに、先輩の顔しか映せられない。