千景くんは魔法使い


千景くんとは祭り会場で待ち合わせをしている。慣れない下駄の音を響かせながら向かうと、【夏祭り】と書かれた看板の前に千景くんがいた。

千景くんは紺色の浴衣を着て、腕組みをしている。お互いに浴衣で行くことは約束していたけれど、千景くんの浴衣姿に鼻血が出そうになっていた。 

……ああ、やっぱりカッコいい!

そのシュッとしてるスタイルは遠くからでも目立っていて、私はどんなに人が多くても千景くんのことをすぐに見つけられる自信がある。

浴衣姿にうっとりしていると、千景くんが私のことに気づいた。

「花奈……?」

なぜか疑問形で名前を呼ばれた。

「ビックリした。なんか……うん、浴衣だと雰囲気が変わるね」

千景くんが戸惑うように目を逸らす。

「……似合わない、かな?」

なんだか急に不安になってきた。すると、千景くんは全力で首を横に振った。

「似合うよ!似合いすぎて、その、俺のほうが緊張してる」

千景くんの耳がほんのりと赤い。こんな照れてる千景くんを初めて見た。

「千景くんも浴衣、カッコいいよ!」

「はは、ありがとう。花奈も可愛いよ。じゃあ、中に入ろうか」 

「うん!」

祭り会場では出店がたくさん並んでいて、お囃子の音が響き渡っていた。


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