千景くんは魔法使い
放課後。クラスメイトは部活に行くための準備をしていた。
一応全生徒が部活に所属しなくてはいけない決まりになっているけれど、名前だけ席を置いて颯爽と帰っている人もいる。
私は去年に引き続きバドミントン部に入った。無遅刻無欠席だけど、ほぼ幽霊部員に近い。
ただでさえ先輩が怖くて後輩はコートを譲っている状態なのに、私は一緒にラリーをする相手がいないからいつもシャトルの壁打ちか、届きもしない声かけを体育館の隅でしてるだけ。
私は着替えるためにジャージを抱えて女子トイレへと向かう。
「ねえ、このリップ可愛くない?」
「本当だ!どこで買ったの?色可愛いね!」
派手な女子グループが鏡の前に集まって化粧をしていた。
避ければ入れなくもないけれど、なんとなく気まずくて、そのままトイレを通りすぎてしまった。
私はジャージをぎゅっとする。
本当なら部室に行って着替えたらいいんだけど、あそこは先輩たちの部屋って感じだし、前に一回だけ使ったら『なんでいるの』みたいな顔をされたこともある。
仕方なく私は教室へと戻る。教室には誰もいなくて、これなら着替えられると思った。