闇の中の太陽
『おいおい、なんだよこれ!』

腕にあった傷が露呈する。

『……っお願いします。するなら、背中にし
てください。お願いします』

『へぇー背中ならいいんだ。じゃあ、い
っよ〜』

そう言っていきよいよくタバコを近づけて
きた。

来る。また傷が増えるのか。

そう思っていると、

『な〜んてな』

そう言ってタバコを下ろした。

えっ、驚いて思わず男の方を振り返った。

この時一瞬でも男に油断したのがいけなか
った。

これを待っていたとばかりに思いっきりタバコを腕に押し付けてきた。

『痛っつぅ』

『ギャハハ。その顔が見たかったんだよ!
誰がおまえなんかのお願い聞くかよ。』

『痛い痛い痛いです』

『やめてほしければ、謝れ!』

『ごめんなさい』

『そんなんで許されると思うか!』

さらに強く押しつけられる

『っわぁー痛っつぅ』

『ほらもっと誠心誠意、謝れ!』

『申し訳ありません』

『もっとだ!もっと!』

『っ生意気な口をきいて申し訳ありませ
ん』

『最初からそうすればいいんだよ』

ぐっと押し付けていたタバコがのく。

痛い痛い痛い痛い痛い痛い。私がいけないんだろうか私が全部悪いんだろうか。

『ひとつだけ教えてやろう。いいか、おまえいつもなんでこんな殴られるのって顔してるから殴られるんだろ。だから、お前は実の父親に捨ってられたー』

さも愉快だと言わんばかりに喋った後フゥーっとタバコの煙を顔に吹きかけられる。

けどそんなことは気にならなかった。

嘘だ。信じられない。どうせ嘘だ。この男
のでっち上げた嘘だろう。

すると目の前に黄ばんだ紙が置かれた。

顔を上げるとニタニタとタバコを吸いながら
『俺のさっき言ったことが信じられないな
ら、自分の目で確かめてみろよ』

顎で黄ばんだ紙を指した。

『これは…なんですか』

思わず聞いてしまった。

けど男は、怒ることなく素直に教えてくれた。

『おまえの父親が書いた手紙だよ。おまえ
が信じられないみたいな顔してるから特別
に見せてやるよ。これで俺の発言が正しい
ハッキリするからよ』

男の話を最後まで聞く前にその黄ばんだ紙
を取っていた。
後で殴られようがどうでもいい。

あの発言が正しいなら、私は、私は!

紙を持った手が震える。パサっと音を
たてながら紙をめくる。

そこには、君と一緒にいれてよかった。僕はまだ君を愛しているなど優しい愛の言葉であふれていた。

なんだこの調子だと母が他の男に移った
感じだな。

な〜んだ。やっぱり嘘か。

そう安心して読み進めていくと、終わりぐ
らいから私の事について書かれていた。

そこで、私は一気に地獄に叩きつけられた

そこには今回君と別れたのは言うまでもなくこのガキのせいという文から始まり、自分は戸籍だけは協力する事や、男だったら一緒にいれたなど私に対する愛のない文ばかりだった。

最初の方の文とは比べ物にならないほど人が違うようだった。

私は視界が真っ暗になるような感覚に襲われた。

嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ!こんなの絶対に嘘
だ!

心の中では何度もそう叫んでるのに、ショックで涙が止まらなかった

『なあ、言ったとおりだろ』

男の言葉が頭の中で反響する。

嘘だ嘘だ

タイミングよく母が電話を終えて帰ってく
る。

『ただいま〜って今度なに!?』

『ん〜いや、実の父親からの手紙を見せてあ
げてただけ〜』

『え〜あれ見せたのぉ〜』

『そだよ〜』

『あーあ。美蘭、気の毒だけど、あれに書
いてある事は事実で、あんたの父親がマジで
送ってきたもんだよ〜あーあ、ほんっと今でも思い出すだけであんたが憎い。これでわかった、私はあんたが嫌い。あの人もあんたが嫌いリュー君もあんたが嫌い。つまりあんたはさ、誰からも必要とされてないの』

プツン。私の頭の中で何が切れた。
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