一夜の過ちで授かったら、極上御曹司に娘ごとたっぷり溺愛されています

「あの……。土曜日はちょっと用事があって」
なんとか断りの言葉を言うと、専務は引き下がることなく言葉を発した。

「用事って?」

「え……っと。そう、町内の掃除が」
自分でもそのいい訳にどんな言い訳よと突っ込みたくなった。
もっとうまいいい訳や、理由があっただろうに。

「へえ。掃除ね」
納得したような、してないような表情の専務を見ながら、私は逃げるように「失礼します」と部屋を出た。

少なからず、真由を遊ばせてあげたい。
あの楽しそうな真由のお願いをかなえてあげたい。
そうは思うも、やはり無理だ。

どういうつもりで誘ってくれているのかはわからない。
昔はともかく、今の優しい専務のことだ。かわいそうな親子にボランティアのようなものかもしれない。

昔の辛かったことを思い出そうとしても、だんだんと今の専務が上書きされていく。
それが私は怖かった。

やはりこれ以上は深入りしてはいけない。

そう思っていたが、私は専務を甘く見ていた。

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