一夜の過ちで授かったら、極上御曹司に娘ごとたっぷり溺愛されています
「咲綾」
「はい」
ぼんやりとしていたのかもしれない、その声に何も考えずに私は振り返った。
すぐそばに専務の顔があり、びっくりして後ろに後ずさる。
「危ない」
後ろの人にぶつかりそうになったのを、専務が私を抱き寄せる形で阻止した。
「すみません……」
慌てて言葉を発して、その腕から出ようとするとするも、専務は私を抱き寄せたままジッと見つめる。
「咲綾。落ち着いて」
「はい……」
もちろん相手が専務ということもあるが、あまり男性に慣れていない私にはこの距離は近すぎる。
「混みあってきたし、そろそろお昼にしようか? 真由ちゃんもお腹すいただろ?」
専務のそのセリフに真由も頷いた。