一夜の過ちで授かったら、極上御曹司に娘ごとたっぷり溺愛されています
「専……!」
言いかけた私の唇に、正面の専務の指が伸びてそっと触れる。
「まなくん?」
真由が驚いて声を上げた。
「そう、真由ちゃん正解!」
真由はもちろん専務を呼んだだけだろう。
「でも……」
「俺を好奇の目にさらしたいの?」
少し悲しそうな表情を作る専務に、少しムッとする。
「そのわざとらしい表情やめてください」
軽く睨みつけると、専務は「バレた?」と笑い声をあげる。
「でも、覚悟を決めて。さあ何にする?」
専務はそう言いながら、食べるのを再開させた。
私はグッと唇を噛むと、頭の中でぐるぐると専務の名前が回る。
こんな風に距離を縮めたくないのに。
それでも、過去のことなど忘れてこの人のことを知りたい。そう思ってしまう自分をもうごまかせなかった。
「真翔さん」
視線を合わせることなど到底できなかったが、私は覚悟を決めてそう言葉にした。
「うーん、まあ合格かな」
少し不本意そうに真翔さんはそう言うと、柔らかく笑った。