一夜の過ちで授かったら、極上御曹司に娘ごとたっぷり溺愛されています

「酒は嫌いなの?」
いや、むしろ大好きだし、そのお酒であなたとの過ちが……そこまで思ったところで真翔さんは立ち上がると、キッチンからワイングラスを持って戻ってきた。
否定しなかったことで、肯定したと思われたのだろう。

目の間のグラスに赤い液体が注がれるのを、私は黙ってみていた。
「コロッケにとってもあうよ」
「じゃあ少しだけ」
久し振りに飲んだアルコールが急激に回るような気がして、私はグラスを置いた。

「大丈夫?」
そんな私に真翔さんの心配そうな瞳がぶつかる。
「大丈夫です。4年ぶりに飲んだから少し」
「そんなに飲んでなかったの?」
真翔さんに真っすぐ見つめられ、私は曖昧に頷いた。

4年前という言葉をいうべきではなかったような気がして、慌てて話を変える。

「美味しいです。このワイン」
飲みやすかったが、きっといいものなのだろう。
私はもう一口飲むと、小さく息を吐いた。
< 141 / 299 >

この作品をシェア

pagetop