一夜の過ちで授かったら、極上御曹司に娘ごとたっぷり溺愛されています
そんな私の言葉に、真翔さんは今までの表情とは一転し、怒ったような悲しいようなそんな風に見えた。

「どうして?」
静かに抑揚なく言われ、私は「嫌」という言葉を使ったことを後悔した。
いくら自分の欲しかった言葉ではないからと言って、これだけお世話になったのだから、もう少し言いようがあっただろう。

「どうしてって……」
視線をさまよわせた私に、真翔さんは思いがけない言葉を発した。


「そうだよな。こんな得体のしれない男のところなんかにいられないよな」
こんな表情をみたことがない。
どういう感情なのか、どういう意味なのか全く分からず、私は反射的に真翔さんを見た。

「咲綾、こないだ言ってたもんな。真由ちゃんの父親を忘れてないって。だからその男のところに帰りたいんだろ。捨てられた男でも忘れられないのか?」
不敵な表情を浮かべて言う、真翔さんの言葉が信じられず私は目を見開く。
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