一夜の過ちで授かったら、極上御曹司に娘ごとたっぷり溺愛されています

「常務に押し付けた。大丈夫」
「どうして?」
敬語を使う事すら忘れ、私は単語だけを並べていた。

「咲綾は言葉は素直じゃないから……。でもわかるよ」
優しく言われた言葉に、私はギュッと真翔さんのスーツを掴む。

来てくれた……。
真翔さんの香りが私を包むと、ようやく息ができたような気がした。

「蓮人さんが……」
「何かされたのか?」
少し緊張したような真翔さんの声音に私は小さく首を振った。

ほっとしたように、真翔さんは呼吸をする。
「咲綾、とりあえず帰ろう。ここじゃあ落ち着かない」
その言葉に、私は頷くと仕事を整理すると会社を後にした。

いつもなら一緒に帰ることもしないが、会食にでも行くと思われたのか、普通にお疲れ様ですと声を掛けられる。

しかし、そんなことは今はどうでもよかった。
真翔さんの車の助手席に座ると、真翔さんも運転席に座りスマホで誰かに電話をしていた。
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