一夜の過ちで授かったら、極上御曹司に娘ごとたっぷり溺愛されています

「もっと早くこうしてればよかった……」
呟くように真翔さんは言うと、抱きしめる力を強めた。
まだ信じられない気持ちだったが、やっぱりこの腕の中は安心して私もキュッと真翔さんの腕を握った。

どれぐらいそうしていたのだろう。

幸せに浸っていた私だったが、ふとあの噂話や、次期社長問題を思い出し、私はそっと真翔さんの胸を押すと真翔さんを見上げた。

「どうした？」
「あの」
呟くように言った私に、真翔さんがでも柔らかな瞳を私に向ける。
「何？　もう一人で背負い込むのはなし。思っていることがあったら言って」

「噂で真翔さんには忘れられない人がいるって……」
ここまで来たら全てをクリアにしたくて、私は真翔さんをチラリとみた。

「なんだその噂。俺が断りすぎるからそんな噂になったのか……でも、それを言うならいつも頭にあったのは咲綾のことだよ」
愛しそうに私の髪を撫でなる真翔さんの瞳が優しくてうれしくなる。