セレナーデ ~智之

「廣澤係長は そんな風に 思ったこと ないですか。」
 

「奥さんに?全くないね。俺の 運命の人だから。奥さんのいない 人生なんて 考えられないよ。」

智之は 照れた笑顔で 言う。
 

「よく言うよ。」

と 宮内に 呆れられて。


「でもさ。そのくらい 好きなじゃないと 結婚しても 幸せじゃないよ。」

智之が 言うと
 

「廣澤係長って 静かに 過激なこと 言いますよね。」

と宮内が 笑う。
 

「俺も 奥さんと 出会うまでは 宮内みたいな 感じだったよ。付き合っていても 楽しいのは 一瞬で。ずっと一緒にいたいとか 思えなかったよ。」
 

「本当ですか。」

宮内は 驚いて言う。
 

「うん。いつも 夢中になれなくて。俺は どこかが 壊れているのかと 思っていたよ。」

智之は 少し 懐かしそうな 目をする。
 

「奥さんには 夢中になったのですか。」
 

「会った瞬間からね。奥さんのこと 考えるだけで 楽しくて。ずっと一緒にいたい 失いたくないって 思ったよ。」
 


「俺 女の子に そんな風に思ったこと ないな。」


宮内は 寂しそうに言う。
 








< 86 / 91 >

この作品をシェア

pagetop