余命2ヶ月の少女は総長と恋に落ちる


「ってめぇ、俺殺してもいいから
そいつを離せ」


蒼野は、どうしてこんなに優しいんだろう。


雀瓦の総長は、わたしから少し離れると


「…蓮華は、拳銃でも騙されねーか!
はいはい、参りました!」


そう言って、颯爽と逃げていった。




その瞬間、何故だかわからないけど一筋の涙が流れた。

…はやく、どっかに行かなきゃ。


だけど、手足を縛られていて何もできない。



「…透花、なんでいなくなったりした?」

どうせ、いなくなるからだよ。


何も言わないわたしを、蒼野は優しく抱きしめた。

「…どこ探してもいねぇし、心配した。」



そう言って少し微笑んだ蒼野は、
拘束されていた手足を助けてくれた。


「もうわたしは姫じゃないんだから、
助けなくてよかったのに」

「お前はいつまでも姫なんだよ」


1ヶ月後に死ぬのに?


ねぇ、苦しいよ。


「助けてくれてありがとう。じゃ」


立ち上がって、キャリーケースを持って、走った。




死にたくない、怖い。

溢れるこの思いには、蓋が必要なのに。



「…っ」


心臓の激しい痛みが走って、息が苦しくなった。


吸入器を口に押し付けて座り込んだ。

< 30 / 45 >

この作品をシェア

pagetop