余命2ヶ月の少女は総長と恋に落ちる
「ってめぇ、俺殺してもいいから
そいつを離せ」
蒼野は、どうしてこんなに優しいんだろう。
雀瓦の総長は、わたしから少し離れると
「…蓮華は、拳銃でも騙されねーか!
はいはい、参りました!」
そう言って、颯爽と逃げていった。
その瞬間、何故だかわからないけど一筋の涙が流れた。
…はやく、どっかに行かなきゃ。
だけど、手足を縛られていて何もできない。
「…透花、なんでいなくなったりした?」
どうせ、いなくなるからだよ。
何も言わないわたしを、蒼野は優しく抱きしめた。
「…どこ探してもいねぇし、心配した。」
そう言って少し微笑んだ蒼野は、
拘束されていた手足を助けてくれた。
「もうわたしは姫じゃないんだから、
助けなくてよかったのに」
「お前はいつまでも姫なんだよ」
1ヶ月後に死ぬのに?
ねぇ、苦しいよ。
「助けてくれてありがとう。じゃ」
立ち上がって、キャリーケースを持って、走った。
死にたくない、怖い。
溢れるこの思いには、蓋が必要なのに。
「…っ」
心臓の激しい痛みが走って、息が苦しくなった。
吸入器を口に押し付けて座り込んだ。