2度目の人生で世界を救おうとする話。前編





この〝夏祭りの任務〟は弱い妖が絡む比較的安全な初心者向けの任務だ。まだ一度も任務をしたことのない1年生にとってはいい肩慣らしになる任務なので、毎年この任務を1年生は初任務として受ける。

次期当主であり、守護者候補筆頭である私や武は例外として実戦大会終了後には任務をしていたが、これは稀なケースだ。

その1年生肩慣らし初任務にはもちろん全く不安要素がない訳ではない。普通の任務と比べれば比較的安全であるだけで、稀に強い妖が現れてしまうこともある。

なのでこの任務には補佐的なポジションも存在する。それが大人の能力者たちだ。

この学校の先生だったり、能力者として活動している大人だったりとそのポジションはいろいろな人が担当する訳だが、学生の身でも実力が認められればその仕事を振られる。

つまり、それが私たちだった。
前回と全く一緒である。


「…妖を1年生ではなく俺たちが見つけてしまった場合その対処は俺たちがしても?」


スッと右手を上げて私は蒼に伺う。
答えなんて聞かなくてもわかりきっている気がするがあくまで確認だ。


「この任務はさっきも言ったけどあくまで1年生の肩慣らしだよ。妖は1年生が退治するからこそ意味がある」

「たまたま俺が見つけた場合は?」

「その可能性は絶対にない。強い妖ではない限りね」


つまり弱い妖は見て見ぬフリをして見逃し、1年生に対処…つまりは殺させ、強い妖なら私が手を出していい、と。

にっこりと笑い私の言葉をばっさりと否定する蒼の言葉の意図を読み取り、私は心の中でやっぱりと大きなため息をついた。

そもそも弱い妖の悪さなど高が知れているのだ。
弱い妖に人間の生死を握るような力はない。
彼らが人間にすることは大体ちょっとだけ困るようなこと。
何故、そんな妖を殺さなければならないのか。


人間は妖に対しての対応が厳しすぎる。
まあ、そうやって教育され続けているから仕方ないのだが。


「僕たちに任せられているのはあくまで今回の任務の補助。僕たちが手を出せば1年生の貴重な経験を潰してしまうことになる。それをしっかり肝に銘じて今回の任務に当たってね?」


もう一度念を込めるように蒼が私、武、琥珀を順番に見つめる。そして最後にまた私を見つめて来た。

絶対に余計なことはするなよ、と目で言われている。


「はいはい。肝に銘じときますよ」


私はそんな蒼に呆れたように笑ってみせた。











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