2度目の人生で世界を救おうとする話。前編





完全に暗くなるまで後30分くらいか。


「…ん!?クレープ!」


妖の活動が始まる時間を逆算しながらも祭り一色の街を歩いていると、クレープの屋台が目に入ってきたので私は思わず二度見してずんずんとそれに向かい歩き出した。

そんな私の急な方向転換に後ろから「おい!紅!お前!こら!」と焦る武の声が聞こえてくる。
これだけの人混みなのできっと私に追いつくのも大変だろうがまあ、武ならすぐに私に追いつくだろう。


「チョコバナナとあとチョコチップクリームください」


クレープの屋台にたどり着くなり、私はメニュー表を一瞥してすぐに店員さんにクレープを頼む。


「はーい。1200円ね」


すると店員さんはすぐに値段を言って、クレープの制作を始めた。その間に私は財布から1200円きっちり出して、クレープの完成を待つ。


「お姉さん1人?」

「…1人じゃないですよ」

「そっか。祭り楽しんで」


完成したクレープを貰い、お金を支払う。店員さんはナチュラルに私の性別を間違えているが私は特にそれについては口出しはせずにっこりと笑った。

今日の服装は学校側から特に指定はなかったので私も武も私服だ。
もちろん私は私服でも男の格好をするのだが、それでも外でだと女の子だと思われることはよくあった。

まあ、実際女だし、それが正しいのだけど。


「おい!紅!」


丁度屋台から離れて歩き出したところで後ろから大変不機嫌そうな武に声をかけられた。
声だけでも非常に怒っていることが伝わってくる。


「…お前な!急に居なくなるなよ!この前任務でお前が大怪我した理由を言ってみろ!」

「ごめんなさい」

「謝って欲しい訳じゃないんだよ!俺は!いいから言え!」

「…油断をしたからです」

「そうだ!そう紅自身が言っていただろ!?それでもう二度と油断はしないと話もしたはずだ!」


予想以上にすごい勢いで怒っている武に怒りを鎮めて欲しくて、一応申し訳なさそうに私は頭をさげるが武の怒りが鎮まる気配はまるでない。








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