2度目の人生で世界を救おうとする話。前編
バチっと近い距離でしっかり目が合った後、武はすぐに私から距離を離した。
「…ん、美味いな、これ」
もぐもぐとクレープを咀嚼しながらも武は私にものすごく優しい笑みを向ける。そんな武の頬と耳はほんのり赤い。
え、これ、友達とのノリ?
恋人に対する態度じゃない?
何て顔でこっち見てんだ。
武の訳のわからない行動に心臓がバクバクとうるさい。朱からはよくこんなことをされるが武…というか朱以外の他の人にはこんなことをされたことがなく必然的にパニックになる。
「…っ!」
だが、そんなパニックも失われたクレープの量を見て吹っ飛んだ。
「た、た、た、武!何てことを!一口が大きすぎる!」
信じられないと言った感じで私は叫んで武をキッと睨みつける。
武に食べられたクレープの量は紙で包まれていない箇所全部。半分とまではいかないがそこはクレープのある意味メインだ。そのメインを武に奪われてしまった。
「…ふ、仕返しだ。このくらいしてもいいだろ?」
「無慈悲!鬼!」
「…うるせぇ。お前もある意味鬼だろ」
「はあ?ちょっと武を置いていっただけじゃん。ちゃんと追いつけるとこにいたじゃん。クレープのメインを奪った武の方がよっぽどじゃん」
「意味が違う。そのことじゃねぇ。この鈍感」
意地悪く笑う武に反論すると何故か武はそんな私に呆れたように笑う。
何が鈍感なのか意味が全くわからない。
とにかくクレープの恨み、覚えていろよ、武。