2度目の人生で世界を救おうとする話。前編





私は1度目の龍の今頃を知らない。
改めて知った龍の情報を頭の中で軽く整理する。

つまりあの惨劇には龍は無関係で、龍の答えのニュアンス的におそらく龍はあの惨劇のことを惨劇の後から知ったようだ。

ついでに1度目の龍の今頃には何の力もなく、他の妖と繋がって指示さえも出せない状況だった。


確かにここは能力者の中心部であり、姫巫女の為の外部からの侵入を絶対に許さない、いわば妖にとっての完全無欠の要塞。

どちらもそうだったのかと納得ができる話だ。



「そっか…。じゃああの襲撃について何か知っていることはない?どんな妖が関わっていた、とか」

『それを聞いてどうする?まさか襲撃を阻止しようと考えているのか?』

「…まあ、そんなところ」

『お前は人間が憎くないのか』



こちらが質問していたのだが嫌悪感剥き出しの龍が逆に私に質問をする。

まあそうだよね。そうなりますよね。
特に1度目の私の事情をよく知っている龍からすれば。




「1度目の私は人間が憎いと言うよりかはどうでもよかった。私を必要としてくれたのが龍だけだったからそれに従っただけ」




つまり、憎んでいた訳ではなかった。絶対に滅ぼしたい存在でもなかった。

ただ捨てられて1人なってしまったから人間から離れただけだ。
だが、私を捨てた人類の未来なんて何の興味もなかったのも事実だ。

滅んでしまってもよかった。








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