2度目の人生で世界を救おうとする話。前編





そんな私を見て、麟太朗様は「謝らないでおくれ、紅」とまた優しく微笑んだ。
本当にお優しいお方だ。

麟太朗様の年齢は二十代半ばとかなりお若い。学生時代から四季家の当主として能力者を束ねてきたお方で、私の記憶の中での四季家の当主は前当主様より、麟太朗様がやっていた時間の方が長い気がする。

何故、麟太朗様が若くして四季家の当主の座にいらっしゃるかというと、妖に前当主であるお父様が殺されたからだ。ただそれだけ。

次の当主の座が空いたから麟太朗様が当主になった。お若かった麟太朗様だったが、能力者として、そして何より統率者として前当主様と同じ、いやそれ以上に力があったようでその若さからは想像もつかないほど当主を完璧に遂行してみせていた。


完璧なのは当主としてだけではない。その容姿、そして性格すべてが神に愛されていると言っても過言ではないほど完璧なお方だった。

腰まである艶やかでまっすぐな太陽や月の光を浴びて輝く黒髪。
目鼻立ちがくっきりとしており、誰が見ても美青年だと頷き、見惚れてしまう顔。
高い身長にすらりと伸びる手足。これは誰もが嫉妬してしまうと同時に見惚れて魂を抜かれてしまう美貌だ。

完璧な人間を挙げよ、と言われたら私なら迷わず麟太朗様と答えるだろう。
いや、麟太朗様のことを知ってる者はみんなそうだろう。


「さて、今回君たちの当主集会に参加させてもらったのは、伝えたいことが何点かあったからなんだ」


麟太朗様がいつもと変わらない優しい笑顔で私たち一人一人の顔を見つめ、話を始める。

この時期の当主集会。そして麟太朗様が伝えたいこと。…多分、あれだな。



「まず一つ目は来週行われる実戦大会のこと」



麟太朗様の台詞が予想していたものと全く同じだったので心の中で、私は「やっぱり」と呟いた。









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