一途な恋とバックハグ
そして楽しい時間はあっという間に終わり角さんと別れ、課長に送られながらお酒が入ったことも相まって私の足元はふわふわしていた。
また角さんと3人で呑みましょう!なんて言って浮かれてる私は、思考回路がマヒしてたのか失礼かつ大それたことを口走っていた。

「課長の笑顔素敵なのに~もっと会社で笑顔でいたらみんな怖がることも無いのになんでいつも無表情なんですかあ~」

「…会社は仕事をする場所だ。笑顔は必要ないだろう」

「でも~、円滑にい~仕事をするには笑顔も大切だと思いま~す!」

憮然と答える課長に偉そうに意見を言っておいて、でも課長の笑顔を見ちゃったら怖がってた女子たちの目がみんなハートになっちゃったらやだな~と独占欲がむくむくと湧いてくる。
課長の笑顔を知ってるのは私だけ、の方がいいな。

「あ~怖い課長も素敵だから~そのままでもいっか~」

「……酔っ払い…」

ぽつりと呟く声が良く聞こえなくてえ~?と聞き返そうとしたらおぼつかない足が躓いて転びそうになった。

「わっ…」

「っ…と、危なかった~」

「あ…あの…」

倒れかかる私を後ろから咄嗟に抱えるように抱きとめた課長に一気に酔いが冷めてドキドキと胸が高鳴る。
背中に課長の体温としっかりお腹に交差された腕に包まれてすごくあったかくて居心地がいい。
嬉しい状況だけど、抱きしめられちゃったよどうしよう!と動揺の方が大きくて固まった。

「…」

「ほら、しっかりしろ。ちゃんと立て」

「は、はい」

課長は私がしっかり立ったのを見てから腕を解いた。
離れていく温もりが寂しいと感じながらも恥ずかしくって動けない。

「気を付けろよ、酔っ払い」

そんなに飲ませたつもりはないんだがなと、そう言いながらポンポンと私の頭を撫でて優しく微笑んだ課長に釘付けになる。

ななな!なにこれ!
今日はほんとに何の日だ!?
お正月とクリスマスと誕生日が一気に来た!って感じ。
課長の笑顔に、実は気さくで優しいところも、後ろから抱きしめられた温もりも、腕の力強さも一気に体験して、知ってしまった課長の意外な一面に私の頭はパンク状態。
お蔭で行くぞと前を行く課長の背中に私はとんでもないことを言ってしまった。


「すっ…好きです!」


「は?」


驚き振り向く課長に自分が驚いてしまった。


「え?」


「え?」


「…え?」


「…え?」


え?え?え?と二人して?マークを頭の上に並べて暫し沈黙。

「……」

「……」


そして先に口を開いたのは課長だった。

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