一途な恋とバックハグ
・・・


私は今日ツイてるかも知れない。
見てみたかった課長の笑顔をその日に見てしまったんだもん!

仕事帰りに買い物をした帰り飲み屋街を歩いていると、ある立ち飲み屋さんの前には外に出された小さなテーブルがいくつかあり、お客さんが楽しそうに飲んでいた。
その中に見紛うことなく見つけたのは嵯峨野課長。
すらっと姿勢の良さが際立っていた嵯峨野課長はどの男性よりもかっこよく目立っていた。
そしてビール片手に隣にいる年配の男性と談笑していて驚いた。

「課長が…笑ってる」

瞼を何度も瞬かせてみたけどどう見ても嵯峨野課長が屈託なく笑ってる。
その笑顔がとっても素敵過ぎて私は蜜に集う蝶のようにフラフラと引き寄せられていた。
近付く私に気付いた課長が目を丸くして私を見つめる。

「ん?笹川?」

「か、課長…こんばんわ」

「こんな時間にどうした?今帰りか?」

「はい、ちょっとお買い物を」

「可愛いお嬢さん、一緒に飲まないかい?」

隣にいた男性に誘われて、課長は嫌かもと彼を見れば奢るから飲んでけと言ってくれて意外だった。
酒は飲めるか?何が食べたい?とテキパキと頼んでくれる課長のお言葉に甘えて同席させてもらう。

「この串焼きが美味いんだ、笹川も遠慮なく食え」

「いただきます。…ん!ほんと美味しい!」

「美味いか?ほら、これも食え」

「ありがとうございます!」

冷徹と言われる課長が気を使っていろいろ勧めてくれて、隣にいた男性、(すみ)さんに職場の部下なんですよと私を紹介する。
「勉強熱心で新人ながらよくやってる」と私を誉めそやすものだから嬉しくて舞い上がってしまった。照れくさくてレモンサワーを一気に飲んでしまうほど。
優しい、優しすぎる!
会社にいる課長とここに居る課長は別人じゃないかと思うほどそのギャップに私はやられっぱなしだった。

一緒にいた角さんはなんと課長とは今日が初対面でたまたま隣で呑んでて意気投合したと言う。
それにもかなり驚いたけど、普段は無口なはずの課長は私にも気さくに話をしてくれてこんなによくしゃべる人だったんだって初めて知った。
聞き上手な角さんに問われるまま、世間話だけでなく趣味の話やプライベートの事まで課長が話すのを隣でフムフムと聞き入っていた。
釣りが好きで休日ほとんど釣りに出かけること。魚を捌くのが得意なこと。今彼女はいなくて一人暮らし…と、私の知りたい情報をたくさん話してくれた。
そして激レアな笑顔を惜しまず振る舞う振る舞う…。
レアすぎる笑顔に見惚れながら私はこの状況を大いに楽しんだ。

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