パンデミック.新形コロナウイルス
三人がいる。あかりへの罪悪感、そして僕を癒してくれたにこると南への依存。その狭間で僕は押し潰されそうになり、あのピンクのバスの事故の夜、あそこで全てを失った男の記憶がフラッシュバックする。僕の心は、あそこで一度死んだのだ。
口をつぐみ、ただ震えている僕の代わりに、にこるが静かに語り出した。
「あかりちゃんがいなくなってからね、秋夫君は本当に荒れていたの。毎日この病院の地下の暗い話ばかりして、他の看護師たちとも上手くいかなくて。上の病棟から退院しても、結局また戻ってきてしまった。私と一緒に、あの地下の暗闇に降りていったんだよ」
にこるの言葉が続く。
「角膜移植をしても、結局目は治らなかった。それでも彼は、退院したくなくて、家に帰りたくなくて、『ここに住む』って言い出したの。……本当は、あかりちゃんのことが大好きで、あかりちゃんから離れたくなかったからなんだよ」
その場に沈黙が流れた。あかりは点滴スタンドを握りしめ、その言葉の意味をゆっくりと咀嚼するように涙を流していた。
「……彼は、寂しかったんだね」
あかりのその一言で、彼女の中で何かが弾けた。あかりは声を上げて泣き喚いた。僕が抱えていた地下の暗闇、見えない瞳の先で彷徨っていた孤独、すべてを彼女が受け止めてくれた。
「私、何も分かってなくてごめん……こんなことまでさせてしまって、本当にごめんなさい」
あかりがそう言って泣き崩れるのを見て、僕はもう我慢できなかった。
あかりへの愛も、この病院という泥の中で僕を支えてくれた三人の体温も、すべてが僕の中で混ざり合い、溢れ出した。僕はあかりの目の前で、子供のように泣いた。理性なんてものは、とっくの昔にどこかへ消えていた。
あかりは、震える僕を抱きしめた。
「もういいよ……いいんだよ、秋夫君」
彼女は僕を許してくれた。
病院のナースステーション、冷たい照明の下で、僕たちは絡まり合うように泣き続けた。あのレントゲン技師が壁を蹴り飛ばしたあの大穴も、ピンクのバスの残骸も、今はもう遠い過去の出来事のように思えた。僕たちは、この閉鎖された場所で、傷つきながらもようやく繋がることができたのだ。
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