パンデミック.新形コロナウイルス
雨が止まないのは、世界が今、泥をかぶっているからだ。
「コロナ」という冷たい雨が降り出したとき、晴天の下で笑い合っていた人たちは、傘をさして真っ先に去っていった。楽しいとき、利害が一致するときだけ僕の隣にいた彼らは、少しでも視界が曇れば、足元が濡れれば、まるで最初から存在しなかったかのように消えてしまった。
あの晴れ間の記憶なんて、今となっては薄っぺらな絵葉書に過ぎない。
僕が今書いているのは、その「雨」の物語だ。
あかり、にこる、南ちゃん。彼女たちは、晴れていた時代にいた人たちじゃない。僕が目の病を抱え、世界から光が消え、誰からも見放されたと思ったあの「入院中の暗闇」で、それでもなお手を差し伸べてくれた記憶の残像だ。
現実の「コロナ禍」という容赦ない雨の中で、誰も僕の寂しさなんて聞いてくれない。喋りかけても、心は通わない。だからこそ、僕は戻るんだ。あの大変だった入院の日々に。あの時、確かに僕の手を握り、僕の孤独を肯定してくれた彼女たちの温もりに。
この物語は、過去への逃避じゃない。
今という最悪の雨の中で、溺れ死なないために、僕が自分の中に作り上げた「シェルター」なんだ。
「晴れているときしか愛せない人」には、この場所には入れない。
コロナという雨に打たれ、誰もが孤独に震えている今だからこそ、あの時と同じように、僕の寂しさを分け合える人たちがここには必要だった。
にこるも、南ちゃんも、そしてあかりも。
彼女たちは、雨が降れば降るほど、僕の傍らでその温度を増していく。晴れの日を追いかけて逃げていった連中には決して見ることのできない、雨の中だからこそ見える「本物の愛」が、この病院という閉鎖病棟の地下にはある。
だから僕は書き続ける。
晴れを信じて裏切られた過去を捨て、雨の中でこそ手を離さない、この泥濘の物語を。
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