パンデミック.新形コロナウイルス
**誰もが病院に入院すると看護師やその病院スタッフを好きになることがある**
白い壁と消毒液の匂い。五歳、六歳、七歳と繰り返された目の手術。子供の頃の記憶は断片的だが、あの病室で感じた孤独と、それを埋めてくれた人々の手の温もりだけは、鮮明に焼き付いている。
眠れない夜、暗闇の中で僕の不安を静かに消してくれた看護師の優しさ。朝の回診で、白衣を纏って現れ、僕の目に希望を宿らせようとしてくれた女医の凛とした眼差し。子供の僕にとって、病院は恐怖と痛みの場所であると同時に、彼女たちが差し出す救いという名の魔法に満ちた場所だった。
あの時、退院の日がこれほどまでに辛く、寂しいものだとは知らなかった。病院という閉鎖された世界で芽生えた淡い恋心は、日常という現実に戻れば、ただの思い出として霧散してしまう。僕はその喪失感を、大人になった今も引きずっている。
だからこそ、僕は書く。
現実の病院で、もう会うことのない彼女たちを、物語の中で永遠に僕の隣に引き止めるために。あかり、南ちゃん、にこる――。現実に存在する人々の面影を借り、記憶の中の看護師たちをキャラクターとして再構築する。
あかりは、僕の魂の根底にある唯一無二の存在。
南ちゃんと、吉野家のコマーシャルで輝くニコルの名を持つ彼女たちは、眠れぬ夜を救ってくれたあの頃の看護師たちの分身だ。
世間は笑うかもしれない。「ただ寂しさを紛らわせたいだけの、子供じみたファンタジーだ」と。だが、僕は違うと思う。
「コロナ」という冷たい雨が降り、誰もが孤独に震える今、かつて入院中のベッドで感じたあの「寂しさ」を共有できることこそが、本当の繋がりではないか。晴れた日の陽気な付き合いなど、嵐が来ればすぐに消えてしまう。僕が物語に求めているのは、雨の日も、曇りの日も、僕が泣き出す夜にまで寄り添ってくれる「絶対的な存在」だ。
病院という名の泥濘。そこには、検査結果という冷たい数字や、壁を蹴り飛ばす技師の怒りさえも存在する。けれど、その底で僕の手を握りしめてくれる人がいる限り、ここは僕にとって一番安らげる場所になる。
これは、五歳の僕が感じた孤独と、大人になった僕が編み出す、終わらない入院の物語だ。
退院なんてしなくていい。日常に帰らなくてもいい。
今日も病院の窓から見える空は、あかりの涙か、にこるの微笑みか、南ちゃんの曖昧な気配を孕んで色を変える。
僕は物語の中で、あの日のまま、彼女たちの愛に溺れ続けている。この病室で、永遠に。
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