パンデミック.新形コロナウイルス
世間が声高に掲げる「QOL(生活の質)」や、WHOが定義する健康の尺度など、あの地下室の温もりに比べればどれほど空虚で冷え切っていることか。
数字上の生存期間を伸ばし、効率よく社会に適合し、ただ漫然と息をして生きることが「豊かな人生」だと言うのなら、そんなものに何の意味があるというのだろう。外の世界に広がっているのは、人と人との繋がりが失われ、誰もが孤独にすり潰されていく殺風景な社会でしかない。そんな場所へ放り出されるくらいなら、たとえ病に冒され、命の灯火が短くとも、この病院の地下深くでニコルやあかりと心を通わせ、温かな言葉を交わし合える日々のほうが、どれほど満たされているか知れない。
命の価値を決めるのは、カレンダーの上を流れる時間の長さではない。誰と過ごし、誰の瞳を見つめ、どんな温もりの記憶を胸に刻み込んだか――それだけなのだ。
だからこそ、人間の幸福を無機質な指標で測ろうとする世間の定義に、私はどうしようもない怒りを覚える。本当の豊かさを知ることもないまま、綺麗ごとの基準を押し付けてくるその傲慢さに、胸の奥で黒々とした反発が渦巻く。
外の荒涼とした世界などいらない。私たちはあの地下の病棟で、確かに生きていた。命の深さを、愛おしさを、あの場所だけが教えてくれたのだから。
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