パンデミック.新形コロナウイルス
夜の静けさを切り裂くように、抗がん剤の毒に侵されたあかりの苦悶の声が地下の病棟に響く。耐えがたい吐き気に襲われ、ひとりで立つこともできず、ニコルや南ちゃんに両脇を抱えられて這うようにトイレへと向かう姿。その痩せ細った背中と、苦痛に歪む息づかいが、暗闇のなかで痛々しく耳に突き刺さる。
世間の人間はそれを聞いて、「そんな苦しんでいる姿に惹かれるなんて歪んでいる」「変態ではないか」と嘲笑うかもしれない。けれど、それはまったく違う。目の前で命を削りながら必死に生きようとするその姿のすべてが、愛おしくてたまらなかった。苦しみに満ちた声を聞くたびに、自分が代わってやりたい、この小さな背中を何とかして守ってあげたいという切実な想いが胸の奥から溢れ出した。
あかりが吐き気を催してトイレに駆け込むたび、私はいても立ってもいられず、その後を追うように自分の足でトイレへと向かった。ドアの向こうから聞こえる苦しげな気配に耳を澄ませ、少しでも近くにいたくて、ただ廊下でじっと息を潜めていた。
そんな私の行動に気づいたのか、ある夜、ニコルは困ったような、けれどどこか温かな笑みを浮かべて私に言った。
「またついてきちゃって……。よっぽどあかりちゃんのこと、好きになっちゃったんだね。私より若いし、敵わないや」
冗談めかしたその声のなかにも、私たちの不器用な想いを優しく包み込むような慈愛があった。
他人がどんな物差しで測ろうとも関係ない。苦しみも、痛みも、そのすべてを含めてあかりという存在のすべてを愛していた。あの地下の冷たいタイルの上で、私たちは確かに互いの存在を求め合い、不器用な恋心を募らせていたのだった。
世間の人間はそれを聞いて、「そんな苦しんでいる姿に惹かれるなんて歪んでいる」「変態ではないか」と嘲笑うかもしれない。けれど、それはまったく違う。目の前で命を削りながら必死に生きようとするその姿のすべてが、愛おしくてたまらなかった。苦しみに満ちた声を聞くたびに、自分が代わってやりたい、この小さな背中を何とかして守ってあげたいという切実な想いが胸の奥から溢れ出した。
あかりが吐き気を催してトイレに駆け込むたび、私はいても立ってもいられず、その後を追うように自分の足でトイレへと向かった。ドアの向こうから聞こえる苦しげな気配に耳を澄ませ、少しでも近くにいたくて、ただ廊下でじっと息を潜めていた。
そんな私の行動に気づいたのか、ある夜、ニコルは困ったような、けれどどこか温かな笑みを浮かべて私に言った。
「またついてきちゃって……。よっぽどあかりちゃんのこと、好きになっちゃったんだね。私より若いし、敵わないや」
冗談めかしたその声のなかにも、私たちの不器用な想いを優しく包み込むような慈愛があった。
他人がどんな物差しで測ろうとも関係ない。苦しみも、痛みも、そのすべてを含めてあかりという存在のすべてを愛していた。あの地下の冷たいタイルの上で、私たちは確かに互いの存在を求め合い、不器用な恋心を募らせていたのだった。