パンデミック.新形コロナウイルス
冷たい点滴のチューブが規則正しくリズムを刻む、静まり返った病室のベッド。その脇に腰掛けながら、僕は窓の外に広がる夜空を見上げていた。
世の中のシステムは、どこまでも冷徹だ。
効率や管理、そして無数のルールが人間を縛りつけ、少しの遅れや不手際すら「クレーム」として切り捨てられていく。誰もがトラブルを恐れ、誰とも深く関わらないように身構えている。その結果として蔓延しているのは、慢性的な孤独と、行き場のない不安感だ。車が少し渋滞しただけでイライラし、電車の遅延に過剰に神経を尖らせる現代人の心は、まさにその「繋がりへの飢え」によって蝕まれている。
けれど、この白い壁に囲まれた院内学級の片隅だけは違っていた。
「ねえ、本当にこれでよかったのかな……なんて、今さら迷ったりしてないよね」
ふと、過去の記憶が目の前の現実と重なる。
あの頃の僕たちは、世間の目から隠れるように、冷たいルールの隙間で必死に互いの体温を確かめ合っていた。勉強ができない自分をからかうように「バカね」とベッと舌を出す明りの笑顔。効率や管理ばかりを押し付ける学校や社会の枠組みから外れた場所で、僕たちは確かに生きていた。
抗がん剤の点滴が落ちる音のなか、医療や薬がどれだけ発達しても、人間の心を真の意味で救い、免疫力を高め、命の炎を燃やし続けるのは、最先端の技術だけではない。それは、誰かを深く愛し、肌と肌の温もりを分かち合い、生の実感を確かめ合うという、もっとも原始的で確かな「人間同士の関わり」だ。
どれほど社会が冷たくなろうとも、人間が人間であるために必要なのは、無機質な正しさではなく、不器用であっても心を通わせ合う温もりなのだ。
僕たちは今日も、その確かな熱量を頼りに、この狭い病室で静かに呼吸を合わせ、互いの存在を確かめ合っている。
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