パンデミック.新形コロナウイルス
そこに懐中電灯の細い光を揺らしながら、ニコルが入ってきた。
「明りの点滴、そろそろ変える時間だよ。起きてる?」
そう声をかけながらベッドに近づいたニコルは、ふと僕の姿を見つけて、意味ありげににやりと笑った。
「あのさ、さっきの勉強、ちゃんと目に入ってる? 明りちゃんのおさわったから、当然頭に入ってるよね。明日テストだからね」
容赦のない厳しい言葉に、僕は思わず頭を抱えた。「うわ、そっか、困ったな……」と小さく呟く。けれど、懸命に治療を受け、ようやく眠りについた明りを無理やり起こすわけにはいかない。
僕は諦めて、ただスッと手を伸ばし、眠っている明りの冷たくなった手をそっと自分の手のひらで包み込んだ。彼女の指先から伝わってくるわずかな体温を感じていると、それだけで不思議と荒れていた心がスーッと落ち着いていくのだった。そのまま、僕は明りのベッドの脇に身を寄せ、その場に一緒に横になるようにして丸まった。
「ちょっと、何やってるのよ……」
その様子を見ていたニコルや、後から顔を出した南ちゃんが呆れたような、でもどこか困ったような声を上げる。
「勉強しなきゃいけないんでしょ? 何やってるのよ本当に」
二人が呆れてため息をつくのが聞こえたけれど、僕の耳にはほとんど届かなかった。周囲がどれほど騒ごうとも、今はこの眠っている明りの手をしっかりと握りしめていさえすれば、それだけで十分に心が満たされる。
夜の底へ沈んでいくような静寂の中、僕はごそごそとベッドの脇を動きながら、ただ彼女の温もりだけを頼りに、その夜の暗闇に溶け込んでいった。
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