パンデミック.新形コロナウイルス
病室の朝の光が、白いカーテンを少しだけ透かして差し込んでいた。
前夜の静寂が嘘のように、少し賑やかな気配とともにマクロン大統領――いや、この空間の主導権を握るかのように、明りがふわりと起きてきた。寝癖のついた髪を軽く手で直しながら、彼女は申し訳なさそうに、だけどどこかイタズラっぽく微笑んでこう言った。
「昨日はちょっと寝てしまって、ちゃんと勉強教えられなくてごめんね」
そう言って、彼女は隠し持っていた一枚の紙をスッと僕の前に差し出した。そこには、今日のテストで出題される問題の答えが綺麗に書き記されていた。
「これね、テストの解答、私が持ってるの。……全部暗記して。あと3時間あるから、ご飯食べながらしっかり覚えてね」
不正と言われればそれまでかもしれない。けれど、目の前にいる明りの真剣な眼差しと、少しでも僕を合格させようというその温もりに比べたら、世の中の厳格なルールや綺麗事なんてどうでもよかった。僕は素直にうなずき、差し出された紙を握りしめた。
そして迎えたテストの結果は、驚くほど上出来だった。
周囲の入院患者やスタッフたちは、僕たちの様子を見てニヤニヤしながら冷やかしてきた。
「おいおい、やっぱり恋人同士のパワーってのは違うねえ!」
「ヒューヒュー、すっかり出来上がってるじゃないか」
からかわれて少し恥ずかしそうに頬を染める明りの横で、僕はどこか誇らしいような、気恥ずかしいような心地だった。
世間の冷たい目や、効率ばかりを重視する大人たちから見たら、こんなものは「不条理な不正」であり、「甘えの構造」だと切り捨てられるかもしれない。けれど、こうして誰かを深く想い、想われ、互いの存在を支え合いながら生き抜いたという事実そのものが、何よりも確かな現実だった。
やがて、こうした一連のプロセスと人間関係がもたらす免疫力や治癒力の向上について、既存の医学界の常識を覆すような、けれどあまりにも人間らしい「新しい研究」として、ひそやかに医療社会へ発表されることになっていくのだった。
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