パンデミック.新形コロナウイルス
僕はその時、ふと強く思い至った。病院という場所は、ただ薬を飲ませて身体の不調を抑えるだけの場所じゃない。傷ついた心を丸ごと包み込み、生きる意味をもう一度取り戻させる、心の病気を治すための場所なのだと。
そして、ふと周りを見渡す。あかりをはじめ、この病院の中にいる人たちはいつ命がなくなるか分からない。誰もが死と隣り合わせの病気を抱え、限られた時間の中で生きている。
そう考えたとき、世間一般の常識に強い疑問が湧いてきた。誰かを恋愛的に好きになったなら、必ず一人の人と結ばれ、結婚し、添い遂げなければならない――その固定概念自体が、この脆く儚い現実の前ではあまりにも不自然ではないのだろうか。
「一人の人間だけを愛さなければならない」というルールに縛られる必要なんて本当にあるのだろうか。
変態と呼ばれる僕の脳裏には、そんな型にハマった常識など吹き飛んでいくような、もっと自由で歪んだ、しかし彼らにとっては切実な真実が広がっていた。命の灯火がいつ消えるか分からないからこそ、目の前にいるすべての人を愛し、その温もりを貪るように求め合ってもいいはずだ。そんな思いが、胸の奥で静かにうねりを上げていた。
< 363 / 417 >

この作品をシェア

pagetop