パンデミック.新形コロナウイルス
病院の喧騒から少し離れた場所で、はるかは別の時間を過ごしていた。彼女はレントゲン室の担当である初老の男性と親しくなり、いつもMRI室の隅で楽しそうに言葉を交わしていた。僕たちの輪には加わってこないものの、その表情は以前よりもずっと明るく、生き生きとしていた。
「まあ、あの子がそれで元気を出してくれるなら、それでいいんじゃないか」
誰もがそう口にし、ふたりのおかしな関係をどこか温かい目で、そして胸をなでおろす思いで見守っていた。60歳を間近にしたレントゲン技師の先生が、高校生のはるかに骨抜きにされ、すっかりデレデレになっている。年の離れた、世間一般から見れば少し歪に見えるかもしれないその恋愛も、この病院という特殊な空間の中では、ひとつの救いの形のように思えた。一人の若い少女をそこまで夢中にさせる男の執念と純愛は、ある意味で素晴らしい恋愛の姿だと言えた。
一方で、僕のほうはどうだったか。
南ちゃんも、ニコルちゃんも、あかりちゃんも、そして最後に流れ込んできた傷だらけのなつみちゃんまで。僕はその誰一人として選ぶことができず、目の前にいるすべての女の子たちに心を奪われ、その全員を気に入ってしまっていた。
「一人の人間を愛せないなんて、それはただの欲張りの言い訳だ」
世間はきっとそうやって指をさすだろう。道徳や常識という物差しで測れば、僕の態度は滑稽で、節操のない変態のそれなのだろう。でも、命がいつ途切れるか知れないこの病院で、目の前で揺れる彼女たちの温もりをすべて受け止めることの何が悪いというのか。
特に、あのときドーナツを差し出し、ストローを共有してくれたなつみちゃんに対して、僕の心は相当な熱を帯びて傾いていた。彼女の持つ影と、あのミスタードーナツのCMのような親しみやすい響きが、僕のなかでどうしようもない執着へと変わっていくのを感じながら、僕はまた彼女の方へと視線を向けた。
「まあ、あの子がそれで元気を出してくれるなら、それでいいんじゃないか」
誰もがそう口にし、ふたりのおかしな関係をどこか温かい目で、そして胸をなでおろす思いで見守っていた。60歳を間近にしたレントゲン技師の先生が、高校生のはるかに骨抜きにされ、すっかりデレデレになっている。年の離れた、世間一般から見れば少し歪に見えるかもしれないその恋愛も、この病院という特殊な空間の中では、ひとつの救いの形のように思えた。一人の若い少女をそこまで夢中にさせる男の執念と純愛は、ある意味で素晴らしい恋愛の姿だと言えた。
一方で、僕のほうはどうだったか。
南ちゃんも、ニコルちゃんも、あかりちゃんも、そして最後に流れ込んできた傷だらけのなつみちゃんまで。僕はその誰一人として選ぶことができず、目の前にいるすべての女の子たちに心を奪われ、その全員を気に入ってしまっていた。
「一人の人間を愛せないなんて、それはただの欲張りの言い訳だ」
世間はきっとそうやって指をさすだろう。道徳や常識という物差しで測れば、僕の態度は滑稽で、節操のない変態のそれなのだろう。でも、命がいつ途切れるか知れないこの病院で、目の前で揺れる彼女たちの温もりをすべて受け止めることの何が悪いというのか。
特に、あのときドーナツを差し出し、ストローを共有してくれたなつみちゃんに対して、僕の心は相当な熱を帯びて傾いていた。彼女の持つ影と、あのミスタードーナツのCMのような親しみやすい響きが、僕のなかでどうしようもない執着へと変わっていくのを感じながら、僕はまた彼女の方へと視線を向けた。