パンデミック.新形コロナウイルス
重い扉が鈍い音を立てて内側へと押し開かれ、冷たい廊下の光が暗い部屋へと差し込んだ。あかり、ニコル、南ちゃんの必死の抵抗もむなしく、侵入してきた夏美の両親の姿が目の前に現れる。
恐怖で息を詰まらせる夏美をベッドの下からかばうように、僕は立ち上がった。怒りに満ちた父親の目が僕を捉えるのと同じタイミングで、僕ははっきりとと言い放った。
「夏実はもう、お前らのものじゃない。もうここに住むことになったんだよ!」
その言葉に、両親はあきれ返ったように嘲笑を浮かべた。
「は? 何言ってんだ、この馬鹿が。ふざけやがって……!」
父親がさらに一歩踏み込んできたその瞬間、僕は抑えきれない衝動のまま、手元にあった小さな容器をつかみ取った。それは先ほどまで夏美が口にし、その口から出た唾や愛液が混ざり合った、いわば彼女のすべてが詰まった液体だった。
僕はそれを、侵入してきた両親の足元へと容赦なくぶちまけた。
「きゃっ……! またそんなことやったの……?」
あかりが思わず頭を抱えてそう声を漏らし、呆れたような絶望的な表情を浮かべる。しかし、冷笑を浮かべていた両親は、目の前で起きたあまりに異常な光景と異様な匂いに、気味の悪さを感じて一歩退いた。
狂気に満ちた空間のなかで、僕の背後から震えて顔を覗かせる夏美を、僕はしっかりと見据えていた。
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