パンデミック.新形コロナウイルス
役所の冷たい蛍光灯の下、山積みになった書類と格闘する日々が始まった。
春香のように頼れる身寄りがない者であれば話は別だった。両親が離婚し、親戚の誰もが厄介払いをしたような孤立した子供であれば、行政の網の目を潜らせてこの病院に定住させる手続きはまだいくらかスムーズに進んだ。しかし、夏美の場合は事情が全く違った。
親がいる。そして、その親が執拗に娘を追いかけてくる。
「どんなに子供が拒絶しようとも、法的には未成年だ。親権の壁は厚い……」
役所の窓口で冷徹に告げられるその言葉が、重く鉛のようにのしかかる。本人がどれほどあの家を恐れ、地獄のような虐待の日々を訴えたところで、日本の法律と行政のシステムは容易にその救いの手を阻む。親権という絶対的な盾の前に、こちらの正当性はあっさりと「誘拐」や「監禁」という罪の形にすり替えられかねない。下手な動きをすれば、私たちが逆に犯罪者として罰せられ、すべてが水の泡になってしまうという法的リスクが常に付きまとっていた。
狂気と純愛だけではどうにもならない、現実の社会が持つ冷酷なシステム。その理不尽な壁の高さに歯噛みしながらも、僕は夏美をこの手で守り抜くための泥臭い闘いに身を投じていくのだった。
春香のように頼れる身寄りがない者であれば話は別だった。両親が離婚し、親戚の誰もが厄介払いをしたような孤立した子供であれば、行政の網の目を潜らせてこの病院に定住させる手続きはまだいくらかスムーズに進んだ。しかし、夏美の場合は事情が全く違った。
親がいる。そして、その親が執拗に娘を追いかけてくる。
「どんなに子供が拒絶しようとも、法的には未成年だ。親権の壁は厚い……」
役所の窓口で冷徹に告げられるその言葉が、重く鉛のようにのしかかる。本人がどれほどあの家を恐れ、地獄のような虐待の日々を訴えたところで、日本の法律と行政のシステムは容易にその救いの手を阻む。親権という絶対的な盾の前に、こちらの正当性はあっさりと「誘拐」や「監禁」という罪の形にすり替えられかねない。下手な動きをすれば、私たちが逆に犯罪者として罰せられ、すべてが水の泡になってしまうという法的リスクが常に付きまとっていた。
狂気と純愛だけではどうにもならない、現実の社会が持つ冷酷なシステム。その理不尽な壁の高さに歯噛みしながらも、僕は夏美をこの手で守り抜くための泥臭い闘いに身を投じていくのだった。