パンデミック.新形コロナウイルス
熱々のコーヒーを一口飲むごとに、冷えた身体の芯からじんわりと温かさが広がっていく。
カップから立ち上る湯気が夜の潮風にフワリと溶けて消えていくのを眺めながら、僕たちはしばし言葉もなく、ただ穏やかな時間に身を委ねていた。コーヒーの香ばしい苦味が、この幻想的な夜のひとときをより一層引き締めてくれる。
「いやあ、最高だな!」
風俗店の店長が自分のコーヒーカップを片手に豪快に笑い、波打ち際を見渡した。
その傍らでは、すっかり満腹になったでっかい猫が、砂浜の上にゴロンと横たわって満足そうに大きなお腹を揺らしている。夏美ちゃんとニコルはその猫のモフモフした毛並みを撫でながら、「もう、こんなに飲んだらお腹タプタプだよー」と楽しそうにキャッキャと笑い合っていた。
大原櫻子の曲を巡ってレコード会社に喧嘩を売ったあの男も、いつの間にかエレキギターをハードケースにしまい、温かいコーヒーを両手で包み込みながら空の星を見上げている。
「なぁ木田、あかり」
店長がふと、優しく穏やかなトーンで僕たちに声をかけてきた。
「こうして夜にしかなんねえ場所だけどよ、俺たちが作ったこの海は、お前らがいつでも息抜きにこれる場所だからよ。いつでも来いっての」
その言葉には、見た目の厳つさや過去のハメを外した行動からは想像もつかないほどの、温かくて深い優しさが満ちていていた。
あかりは店長の顔を見て、心から嬉しそうな、とびきりの笑顔を浮かべた。
「ありがとうございます……店長さん。私、今日ここに来られて本当に本当によかったです」
そのあかりの言葉に、店長は照れくさそうに頭を掻き、「おう、当たり前だ!」と力強く頷いた。
僕たちは再びコーヒーカップを傾け、小さく乾杯をするように掲げた。
夜の海の青さ、きらめく星々、屋台のあかり、そしてかけがえのない仲間たちの温もり。すべてが完璧に調和したこの場所で、僕たちの夏は、誰にも邪魔されない永遠の輝きを放ち続けていた。
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