パンデミック.新形コロナウイルス
テレビ画面の向こうで平和記念式典の鐘が鳴り響く中、僕はあかりの涙をそっと指先で拭いながら、胸の奥にあるその違和感について考えていた。
世代が違うから分かり合えない、時代の流れだから仕方がない――そうやって簡単に片付けてしまっていいのだろうか。
電車のなかで隣の人と目を合わせることもせず、会話すらタブーとされるような今の空気。それは本当に「進歩」や「安心」なのだろうか。目に見えないウイルスに怯え、人と人との距離を強制的に引き離されたあのコロナ禍を経て、僕たちは何か大切な温もりを、効率や安全という名の引き換えに置いてきてしまったのではないか。
原爆や戦争の恐ろしさも、人との何気ない繋がりも、形や時代は違えど、人間の本質に関わる大切な記憶や感覚はずっと引き継がれていくべきものなはずだ。なのに、それを「古い感覚だ」の一言で切り捨てられてしまう現代のスピード感に、僕はどうしても寂しさを覚えてしまう。
「ねえ、明くん……」
あかりが涙を拭い、潤んだ目で僕を見上げた。その瞳には、自分の病気の苦しみだけでなく、同じように傷つき、すれ違うこの世界の行く末を案じるような深い優しさが宿っていた。
「うん?」
「時代の流れが変わってもさ……私と明くんの間にあるものは、ずっと変わらないでいようね。たとえ周りがどんなに冷たくなっても、私たちは温かいままでいようね」
その言葉は、まるで冷え切った現代の空気をそっと溶かすような、不思議な力を持っていた。
僕はあかりの手をしっかりと握り返し、力強く頷いた。
「もちろんだよ。どんなに時代が変わったって、僕たちが感じた温もりや、あの海の家で見た星の輝きは本物だ。僕たちは僕たちの温度を、絶対に忘れない」
テレビの中では式典が終わり、静けさが戻りつつあったけれど、病院のラウンジの片隅で手を取り合う僕たちの間には、どんな冷たい時代にも負けない確かな体温が灯り続けていた。
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