パンデミック.新形コロナウイルス
医師が言った「あかりさんのそばにいてやれるのは、今のところ君しかいない」という言葉。その意味を噛み締めながら廊下を歩きつつ、僕はふと、自分自身の中にある奇妙な感覚に気づく。
――そう、この病院にいる「僕」は、今ここであかりの側に寄り添っている若い僕だけではない。
時が流れ、未来の大人になった「僕」もまた、この病院の担当員として、同じようにあかりを支えるためにこの場所に存在しているのだ。
同じ病院の、同じ時間の流れの中に、過去の僕と未来の僕という「同じ人間」が同時に2人存在している。常識ではありえない、タイムパラドックスの様な不思議な現実。けれど、この光と闇が入り交じる地下病棟では、そんな不可思議な現象さえも、どこか自然なことのように受け入れられてしまっていた。
未来の自分がどんな思いであかりを見守っているのか。そして、今ここにいる若い僕が、これからどんな時間を経てあの未来の自分へと繋がっていくのか。
過去と未来が同じ空気を吸い、同じあかりの笑顔を見つめている。
この物語が持つ最も不思議で、そして切なくも美しい秘密が、静かな地下の廊下にそっと溶け込んでいくのだった。
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