3分遅れのアンダンテ
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「おはよう、奏音ちゃん」
「おはようございます、祈先輩!」
朝、アルバイト先のファミレスに来ると、もう既に祈先輩が出勤してきていた。
「先輩、早いですね」
「うん、最後だからと思うと名残惜しくてつい早く来ちゃったんだ」
そんな祈先輩の言葉から、本当にこのアルバイトが好きだったんだろうと想像がつく。
例え将来のためとは言えども、ここまで続けるには好きじゃないとできないと思う。
「ちょっと早く来すぎて掃除が捗っちゃってるんだけどね」
あはは、と先輩は笑った。
いつも変わらない祈先輩の笑顔を見られるのは今日が最後。
目に焼き付けておかないと。
そう思うけど、最後になってしまうのが辛かった。
「制服に着替えてきますね」
「うん、行ってらっしゃい」