3分遅れのアンダンテ




***



「おはよう、奏音ちゃん」



「おはようございます、祈先輩!」



朝、アルバイト先のファミレスに来ると、もう既に祈先輩が出勤してきていた。



「先輩、早いですね」



「うん、最後だからと思うと名残惜しくてつい早く来ちゃったんだ」



そんな祈先輩の言葉から、本当にこのアルバイトが好きだったんだろうと想像がつく。



例え将来のためとは言えども、ここまで続けるには好きじゃないとできないと思う。



「ちょっと早く来すぎて掃除が捗っちゃってるんだけどね」



あはは、と先輩は笑った。



いつも変わらない祈先輩の笑顔を見られるのは今日が最後。



目に焼き付けておかないと。



そう思うけど、最後になってしまうのが辛かった。



「制服に着替えてきますね」



「うん、行ってらっしゃい」


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