3分遅れのアンダンテ
開店時間になり、少し早めのお昼を食べに来たお客さんがチラホラ見えてきた。
「何名様でしょうか?……3名様ですね。ではご案内致します」
ホールの仕事は、お客様の席案内とメニューを聞くこと。
そして、できた料理をテーブルまで運ぶこと。
手の空いた人がレジを担当するという感じ。
春休みに入っていることもあって、子どもを連れたお母さんグループだったり、学生も多かった。
中でも目についたのはカップル。
……いいなぁ。
祈先輩とあんな風になれたら。
そんな妄想ばかりが膨らむ。
「…のんちゃん、……奏音ちゃん?」
「はっ!……い、祈先輩?」
「大丈夫?一点見つめてぼーっとしちゃってたみたいだけど」
「大丈夫です、すみません…」
「春休みでお客さんも増えたからちょっと疲れちゃったのかもね。もし辛かったら休憩取ってもいいよ?」
「いえ、大丈夫です!」
せっかく祈先輩と居られるのに、休憩に入るなんて勿体ない。
少しでも、ほんの少しだけでも長く先輩と同じ時間を過ごしたい。