3分遅れのアンダンテ



開店時間になり、少し早めのお昼を食べに来たお客さんがチラホラ見えてきた。



「何名様でしょうか?……3名様ですね。ではご案内致します」



ホールの仕事は、お客様の席案内とメニューを聞くこと。



そして、できた料理をテーブルまで運ぶこと。



手の空いた人がレジを担当するという感じ。



春休みに入っていることもあって、子どもを連れたお母さんグループだったり、学生も多かった。



中でも目についたのはカップル。



……いいなぁ。



祈先輩とあんな風になれたら。



そんな妄想ばかりが膨らむ。



「…のんちゃん、……奏音ちゃん?」



「はっ!……い、祈先輩?」



「大丈夫?一点見つめてぼーっとしちゃってたみたいだけど」



「大丈夫です、すみません…」



「春休みでお客さんも増えたからちょっと疲れちゃったのかもね。もし辛かったら休憩取ってもいいよ?」



「いえ、大丈夫です!」



せっかく祈先輩と居られるのに、休憩に入るなんて勿体ない。



少しでも、ほんの少しだけでも長く先輩と同じ時間を過ごしたい。



< 8 / 21 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop