〜トラブル〜 黒のムグンファ・声を取り戻す旅

 一方、メンバー達は今日の撮影を楽しみにしていた。

 最近は室内での作業が多く、ノエル・テオ・ジョンの年下組3人はレコーディングに追われ、体を動かしていなかった。
 ゼノ・セスにいたっては、最後に太陽を見たのはいつだったか考え込む有り様だった。

 仕事とはいえ、皆でバスケが出来ると思えばワクワクしないはずがない。

 メンバー達は早々に作業を切り上げ、ランチをした後、体育館に向かった。

 ノーメイクのメンバー達が予定より2時間も早く体育館の控え室に現れた事で、事務所スタッフは慌てたが、まだ、スタッフが揃わずリハーサルが出来ていない事を伝えた。

「僕達でカメリハすればイイじゃん?」
 誰ともなく言いながら、5人は2階席から体育館を見下ろす。

 スタッフ達がバスケをして遊んでいた。
 
 ノエルは、ジョンのゼッケンが入口に置かれたままになっていると発見した。

「ジョンが来てないんじゃん」

 ノエルは髪をかき上げながら笑う。


 体育館の駐車場からオートバイのエンジン音が聞こえて来た。
 メンバー達は顔を見合わせ、その音に耳をすます。

 バイクのエンジン音が止まり、しばらくして1人の少年が入って来た。

「遅いぞ!トラブル!」
 パク・ユンホが叫ぶ。

 トラブルと呼ばれたその少年はペコっと頭を下げ、黒のスカジャンを脱いだ。

 メンバー達は、その少年が女性であると知った。

 その女性は黒髪を刈り上げ、前髪は長く、目が隠れている。黒の長袖シャツにブラックデニム、黒のワークブーツを履いている。

 一見、少年に見えるが、すぐにそうでないと分かるのはスタイルの良さだった。
 身長170㎝弱か。
 細くて長い手足に、バランスの取れた腰。
 少し錨型(いかりがた)の肩から、スッと首が伸び、小さな頭が乗っている。
 長い前髪で顔を隠しているが、美しいのが分かる。

「トラブル!ゼッケンを付けろ!」
 パク・ユンホの指示で、トラブルはゼッケンを拾い上げた。

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