〜トラブル〜 黒のムグンファ・声を取り戻す旅

「あれ、僕?女の人⁈」
 ジョン本人は指を差して驚き、他のメンバー達は声を殺して笑った。

「トラブルはジョンより10㎝程度身長が低い事を計算に入れて!リハーサル始めるぞ!」
 パク・ユンホの矢継ぎ早な指示で、慌ただしく試合が開始された。

 3on2で、チームを分ける。
 ゼノ、セス、テオ VS ノエル、ジョン

 ジョン役のトラブルとゼノ役のスタッフが、ジャンプボールをする。

 2人がジャンプして、ゼノ役がボールをキープすると、パク・ユンホが大声を出して試合を止めた。

「トラブル!本気でやれ!」

 トラブルはペコッと頭を下げ、試合はもう一度、仕切り直す事になった。

 セス役がボールを上げる。
 ゼノ役がジャンプして叩こうとした瞬間、トラブルの手がスッと伸びて来て、手の平1つ分上回った。

 トラブルが叩いたボールをノエル役がキャッチし、ドリブルシュート!
 先制した。

 ゼノ役のスタッフは「チッ」とトラブルを(にら)む。

「今のなんだ⁈」
「メチャクチャ高く飛んだよー!」
 メンバー達は、トラブルの驚異的なジャンプに盛り上がる。

 試合が再開される。
 再び、トラブルとゼノ役のジャンプボール。

 また、トラブルのジャンプがゼノ役を上回った。

 ボールはノエル役に向かい転がる。

 トラブルが着地をした瞬間、ゼノ役がトラブルの肩を突き飛ばした。
 トラブルは後ろに尻もちを付く。

 ボールはテオ役が拾い、セス役にパスをした。
 トラブルは素早く立ち上がり、そのボールをカットしたが、ゼノ役に足を引っ掛けられ、派手に転倒した。

 転倒したトラブルを見て、スタッフ達は笑い合う。
 トラブルは黙って立ち上がり、下を向いたまま表情を変えなかった。
 パク・ユンホは薄笑いを浮かべるだけで、何も言わない。

「今の、笑えないんだけど・・・」
 見ていたメンバー達は困惑した。

 試合が再開される。

 トラブルは突き飛ばされ、足を引っ掛けられ、ボールを背中に当てられる。しかし、彼女は無言で立ち上る。

 味方のはずのノエル役のスタッフも、面白がってシャツを引っ張り、立ち上がろうとする腕を足払いして笑った。

 トラブルは何も言わずに立ち上がり続けた。
 パク・ユンホは腕を組み、片手を頬に当てて、ただ見ている。

「いい加減にしろよ!」
 2階席からセスが叫んだ。

「ファールだ!」
「そうだ!」
「イジメだ!」
 他のメンバー達も続いた。

「リハーサルは充分だな」
 パク・ユンホの一言で、リハーサルスタッフ達はゼッケンを脱ぎ、帰り支度を始める。

 ゼッケンを外すトラブルに向かい、パク・ユンホは大声で叫んだ。

「トラブル!ロングシュート!」

 トラブルはボールを拾い、その場で2回ドリブルした後、大きく振りかぶって投げた。

 ブンッ

 ボールは真っ直ぐに、メンバー達の下のゴールに吸い込まれた。

「わぁ!すごい!」

 5人は階段を駆け下り、体育館に入るが、すでにトラブルの姿はなく、見えたのはバイクのエンジン音と共に走り去って行く後ろ姿だけだった。

< 4 / 64 >

この作品をシェア

pagetop