もう誰かを愛せはしない
「…だってライハ、本当に好きになった人にあげるって言ってたもん。…私にくれないって事は、私はライハの本当に好きな人じゃないことでしょ」



別に今幸せだし、そこまで指輪にこだわってるワケじゃないけど…



指輪の理由を知っているから

ちょっと不安になっただけ。




「拗ねんなよ」

「別に。拗ねてないもん」



プイッと礼羽から顔を逸らすと、礼羽はフッと息を漏らして笑った。




「…指輪の理由は嘘だよ。これはただのファッションだ。本当に好きになった人にあげるなんて、俺はそんなキザじゃない」

「本当に?」



少し顔をあげて礼羽の顔を見上げると、礼羽は少し屈んでキスをしてくれた。



道端でキスするなんて恥ずかしかったけど、幸い休日の朝だから私達以外に人はいない。




「俺は本当に好きでもねぇ女と一緒に住んだりしねぇよ。面倒くせぇじゃん」


「あんな貧相な食事も耐えられないって?」


「そうだな。メイサとだから質素な食事もごちそうに見えるんだろうからな」



礼羽は八重歯を見せて笑うと、手を優しく握ってくれた。





朝日が差し込む道を歩きながら

礼羽を好きになってよかったと思った。
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