もう誰かを愛せはしない

4・優しい嘘

季節は早いもので

礼羽と同棲してから3ヵ月が経ち


大学生になって初めての夏休みを迎えた。




「わぁ…緑がいっぱいだね」

「田舎だからな」



夏休みは稼ぎ時だとバイトのシフトを詰めていた私達は、最近一緒にいる時間が少なく、すれ違いの生活を送っていた。



それを気遣ってか、礼羽が旅行を計画してくれたのだった。



…っていっても、毎月お米を送ってくれる礼羽のおじいちゃんに会いに行くだけなんだけど。




それでも新幹線に乗って遠出が出来る事に、私は喜んでいた。




「ライハのおじいちゃんってどんな人?」

「普通の農家のじぃちゃんだよ」

「優しい?」

「あぁ。俺、高校入るまではじぃちゃんに育てられてたしな」




へぇ〜…。


じゃあ中学まではおじいちゃんの家に住んでたんだね。



じゃあ何で高校は実家から通うことにしたんだろう。





「ライハが高校もおじいちゃんの家の近くの高校を選んでたら、私達出会ってなかったんだね」


「そうだな」


「でも何で高校は実家から通うことにしたの?」



礼羽は頬杖をついて外を眺めたまま、口を開こうとはしない。



言えないような理由なのかな。

…暴力事件を起こしたとか?



まさかね。
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