もう誰かを愛せはしない
「…親に連れ戻されたんだよ。じぃちゃんに迷惑だろって。俺はじぃちゃんとの田舎暮らし好きだったのに」



なんだ、そんな理由か。




「ライハがそこまで好きになるんだもん。きっと素敵な所なんだね」



遠足に行くみたいにワクワクしてきた私は、窓の外に広がる自然を眺めていた。




「ライハ、ライハ!お菓子買って」



新幹線の中でお菓子や飲み物を売っているワゴンを押した乗務員を呼び止めると、礼羽は渋々お菓子を購入してくれた。




「メイサはいくつのガキだよ。もうすぐ着くのに」

「これも旅行の醍醐味でしょ」

「ちょっと違う気がするけど」



お菓子を食べながら他愛のない話をしていると、窓から山が見えてきた。


一面に広がる緑。



なんだか目が良くなりそう。
…なんちゃって。




「着いたぞ」



礼羽と手を繋いで駅を出ると、澄んだ空気が広がった。




「うーん…空気が美味しいね!静かだし、気持ちいい」

「だろ?」



礼羽がここにいたがった気持ちが分かる気がする。



畦道をどんどん歩いていくと、田んぼが一面に広がる場所に出た。
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