もう誰かを愛せはしない
「礼羽と喧嘩でもしたのかな?」

「喧嘩…じゃないです。私がいけないんです」



私の話をゆっくり頷きながら聞いてくれるおじいちゃん。




「私がユウキさんの存在を気にしすぎて、ライハと上手くいかなくなっちゃったんです」


「ユウキか…。あの子は本当にいい子だったからな。いつも笑顔で気の利く子でなぁ。あんなに早く逝ってしまったのがおしいくらいだった」


「おじいちゃんもユウキさんの事、よく知ってるんですか?」


「あぁ。すぐそこの家に住んでたからな。よく礼羽とウチで遊んでたんだよ。礼羽と同じ年頃の子はユウキくらいしかおらんかったからな」



礼羽とユウキさんが過ごしてきた十数年に、私が勝てるワケがない。


礼羽が私といてもユウキさんを想ってしまうのは仕方のない事だよね…。




「でもなぁ、メイサさん。礼羽はあの通り見た目が整っておるだろう。祖父のワシが言うのもなんだがな。だからあいつは小さい頃から、おなごに人気があってな」



確かにカッコいいよね、礼羽。

女の子に冷たいけど。




「でもどんなに好かれても、あいつは誰とも付き合ったりしなかった。きっとユウキを思い続けていたんだろうな。

だから礼羽がメイサさんを連れてきた時は本当に嬉しかったんだよ」



「嬉しい…ですか?」


「あぁ。礼羽がやっと前を向いてくれたんだって思えたからな。…礼羽は不器用なだけだ。だから大丈夫だよ、メイサさん。

そしてありがとう。礼羽を変えてくれて」




ありがとうはこっちだよ。


さっきまで沈んでいた気持ちが、少し明るくなってきたよ。



ありがとう、おじいちゃん。
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