もう誰かを愛せはしない
「おかえり、メイサ。お腹空いてない?」



お母さんは私に近寄ると、優しく手を引いて家の中に入れてくれた。



リビングに入ると、ソファに座っているお父さんが私のことを一瞬見て、すぐに視線を逸らした。




お父さんはお母さんのように、受け入れてはくれないのかな?



当たり前か…

一人娘が他の男と同棲してたなんて嫌だよね。




「お父さん…」

「お前には帰ってこれる家があるんだ。幸せな娘だな」



お父さんはテレビを観たまま、そう呟いた。




「…早く手を洗ってきなさい。お母さんがご飯よそってきてくれるから」



私はバカだったんだ。


こんなに温かい家庭から飛び出してしまうなんて…




お父さんに対しても
お母さんに対しても

礼羽に対しても……




私はいつだって自分の気持ちを優先する子どもだったんだ。





「ごめ…んなさいっ…ごめんなさい!!お父さん、お母さん…ごめんなさい」



今は、その言葉しか出て来なかった。







ごめんね。
お父さん、お母さん…



…礼羽。





私、もっと大人になるから…




そしたら礼羽、私また

礼羽の所に戻ってもいい?
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