もう誰かを愛せはしない
キラキラとした瞳に負け、渋々中に入った。



「ライハはプリクラとか写真とか嫌がるから、一緒に撮った事ないなぁ…」


「きっと彼氏、独占欲が強かったんだよ」


「独占欲?」


「うん。他の男にメイサを見せたくなかったんだよ」



いや、あれはただの面倒くさがりなだけな気がするけど。




翔介は私の話を聞きながら画面をタッチしている。



「…ショウスケは私がライハの話するの嫌じゃないの?」



自惚れすぎかな。


でも私は、彼氏や好きな人の過去の恋愛って正直あまり知りたくない。



何て心が狭いんだろう…。




だからユウキさんの存在も受け入れられなかったんだ。




「嫌じゃないよ。どっちかって言うとメイサが好きになった人の話を聞きたい。だから何でも話してよ」



翔介は設定画面から離れると私に寄り添い、カメラにピースを向けた。


私も笑顔を作る。





今思い返せば、礼羽とは恋人らしい事をしてこなかった気がする。



そりゃキスしたり抱き合ったり、好きだって言い合ったりしたけど

仲のいい友達の延長線。



そんな感じだったよね。





出来上がったプリクラを見ながら私達はカフェに入った。



「メイサは彼氏とどんな所行ったりしたの?」



翔介は珈琲に砂糖をドバドバ淹れながら、私の顔を見た。




「…ライハとは同棲してたから家にいた記憶しかないなぁ。バイトばかりであまり一緒にいられなかったけど」


「デートは?」


「付き合う前は学校帰りにカラオケ行ったりしてたけど、付き合ってからは何処にも行ってないよ。…スーパーに買い出しに行ったくらいかな」



翔介に礼羽の話をすると、どれだけ薄い付き合いだったかがよくわかる。



でも、特別なことは何もしなくても私の心は満たされてたんだよ。




ご飯食べて『美味しいね』って笑ったり

手を繋いで『あったかいね』って照れたり

キスした後に『好きだよ』って愛を確かめ合ったり…




それだけで凄く幸せだった。
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