もう誰かを愛せはしない
「メイサ!偶然だね」

「同じ学部なんだから偶然も何もなくない?」



少し冷たく言い放つと、翔介はガクッと頭を下げてうなだれた。


それを見て美佳が笑う。




「メイサと川野先輩って、どっちが年上かわからないね」

「本当だよな、メイサは女王様みたい……って君、なんで俺の事知ってるの?まさか…メイサ、俺の話してくれてるの!?」



いや…


してるっちゃしてるけど、翔介が喜ぶような内容はしてないよ。




「美佳から聞いたんだけど、ショウスケと私達同じ高校みたいよ」

「えっ!?マジ!?」



やっぱり知らなかったのか。

学年違うし、当たり前だよね。




「川野先輩、超美人な先輩と付き合ってましたよね」

「そんな事まで知ってんの!?君、何者!?」

「女の情報網を甘く見ちゃダメですよ」



美佳と翔介は高校時代の話で盛り上がっている。




てか、美人な先輩と付き合ってたって何!?

私、美人じゃないけど?




何だかイライラしてきた私は、仲良く話している美佳と翔介を置いて歩き出した。



「美佳、講義始まるから行こう」

「え?ちょっとメイサ…!?川野先輩いいの?」



知らない。翔介なんて。


別に友達でも彼氏でもないし。




翔介みたいにカッコいい人が私なんかに構うなんて可笑しいと思った。


からかってたんだ。

私の事バカにしてたんだ…。




ズカズカ歩いていると、後ろから翔介が追ってきた。



「メイサ、何怒ってるの?」

「うるさい!ついてこないで!!あんたも早く授業行きなさいよ」



私だって分からないよ。


自分が何でイライラしてるのか。




「…俺が美佳ちゃんと話してたから妬いてんの?」



はぁ!?

何で私が妬かなきゃならないのよ。



別に翔介なんか好きでもなんでもないし。
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